白内障は治るのか?

 白内障は老人性の病気で、年齢を重ねるとかなりの確率で罹ってしまい、治癒することはない、というのが私が若い頃持っていた認識だった。

 しかし、二十年前ぐらいから、白内障は簡単な手術で治ると言われ、実際に私の周りでも手術する人が出てきた。私のすぐ上の兄もその上の兄も手術を受け、よく見えるようになったということで、もし私も白内障が発症したら手術すればいい、と気軽に考えるようになった。

 七年前の六十六才のとき、目が疲れやすく、ときにかすみ、まぶしくて仕方がないとか、目に映る風景が歪んだりするようになった。夜、目覚めたときなど、目の前に三日月のような形のものがピカッと光るようになるに及んで、眼科に出向いた。

――どれも白内障の症状です

 と医師は言った。ふーん、暗闇で三日月が光るのも白内障の症状なのか、と私は内心ではホッとした。何か目の得体のしれない悪い病気にでも罹ったのかと思ったからである。医師はつづけた。

――ただ、あなたの白内障は軽度なもので、白内障気味といった程度ですから、まだ手術の必要はないでしょう。様子を見て、時期がきたら手術を検討しましょう

 白内障が進行するのは時間の問題かもしれない、と私は覚悟した。相方に話すと、

――それじゃ、アクティベーターがいいかもしれないわ

 と言う。
――何、それ

――アロエベラ製品よ

――化粧品として販売されているものだけど、それで白内障が良くなったという人は何人もいるって聞いてるわ

――ふーん、それでその化粧品をどうするの

――目に入れるのよ、目薬みたいに。でもね、原液のままだと、凄く沁みて痛いから、倍に薄めるといいわ

 何も知らない人は、目に化粧品を入れるなんて、理解できないだろう。とんでもない、と思うかもしれない。しかし、私はアロエのゼリーを傷薬として使っていて、屋根から落ちて頭が裂けたときも病院に行かずそれで治してしまったぐらいだから、アロエの絶大といっていいぐらいな効用は確認済みだったので、瞬時にアロエ製品のアクティベーターは目にいいだろう、と信じた。

 言われたように、アクティベーターを倍にうすめたものをスプレーに入れて、日に四、五度は目に注すようになった。医師から処方された目薬では諸症状が改善されたようには感じられなかったが、アクティベーターをさすようになってから、目のまぶしさ、歪み、疲れ、ピカッと三日月が光ることなど、次第に改善されるのが分かった。

 それから七年の月日が流れ、目がしょぼついたり、目脂が出るようになった。もともと視力がやや弱い左目で見ると、風景に白い幕がかかる感じで、いよいよ白内障が進んだのかと眼科に出向いた。

 すると白内障があるにはあるが、結膜炎になっているという。結膜炎の治療をしてから、詳しい検査をすることになった。二種類の点眼剤を処方され、十日後、検査を受けると、左目は霞んで視力検査が不可能だったが、右目は視力が0.9あるという。

――運転免許更新はいつですか

 と医師がいう。

――一年半後です

――微妙なところですが、運転免許更新には0.7以上あればいいので、今のところは問題ないです。三か月後検査して白内障が進んでいるようなら、手術しましょう。白内障の点眼剤を出しますから、それを注して様子を見ましょう

 それから三ヶ月たった。

 白内障は進まず、むしろ殊に白く幕がかかったように見えた左目がよくなったように感じられる。

 両眼とも白内障が進んだように感じられたのは結膜炎のせいだったのだろう。結膜炎が治癒したことで、目が本来の視力を取り戻したのである。

 七年前の白内障気味と言われた目が進行しなかったのは、やはりアクティベーターのおかげなのだと今にして改めておもう。
 
 実は、眼科に出向いた三か月前、ある一冊の本に出会った。相方が毎月通っているセミナーで聞いてきたもので、「読んでみたら」と奨められたので、アマゾンで取り寄せて読んでみたのである。

 「自在力」塩谷信夫。表紙に、呼吸とイメージの力で人生が思いのままになる。健康・長寿で、願いもかなう。人生全てがよくなる妙法! とある。

 若い頃はひ弱で病気がちだったのが、六十才を過ぎてから元気になり、百六才まで生きた、と言うところに注目した。自分で考案した呼吸法とイメージ法でそうなったというのである。その内容はここには記さないので、興味のある方は著作を読まれたい。六十才を過ぎてから元気になったのは私も同じなので、身近に感じ、より注目した。

 ところで塩谷信夫著「自在力」をここに挙げたのは、読み進めるうちに、八十代の半ばになった白内障を手術することなく、呼吸法とイメージの力で治したとあったからである。九十才のときには前立腺肥大で小便が出なくなってしまったのを、これまた同じ方法で自分で治した、ともあった。

 私の目の状態の悪化は白内障の進行ではなく、結膜炎のせいだったのだが、塩谷氏のイメージと呼吸法に触発されて、今までやってきた潜在意識をより徹底して使って、白内障をより改善するべく、誘導自己暗示法を実践することにした。塩谷氏述べる方法と私が常日頃信奉している中村天風の誘導自己暗示法は共通しているとおもったからである。

 眼科で処方された白内障の治療点滴剤を目に注すときには、

――この薬は効く、良く効く、目のレンズの曇りがとれて、はっきり見えるようになる

 と、念じる。これを日々繰り返す。

 私は最近のエッセイで何度も述べてきたが、潜在意識には三つの役割があって、それは、健康を保持する、記憶を貯め込む貯蔵庫としての役目、願望を実現する、の三つなのだが、そのうちの三番目の願望を実現する、を使うということなのである。

 目薬を注すとき以外でも、目が良くなる、と口の中でつぶやくことを繰り返す。そして、周りの光景がはっきりと見えるようになったときのことを具体的におもい浮かべ、嬉しさ、歓びに浸る。自己暗示は、眠る間際と目覚めてすぐの時間帯がより重要なので、床についたとき、しっかりこれを集中してやる。そして、目覚めたときは、目が良くなるではなく、目が良くなった、はっきり見えるようになった、と断定する。

 これを三ヶ月毎日つづけてきてどうなったか――

 明らかに良くなったと感じる。両眼とも。特に、白い膜がかかったように見えていた左目が白い膜がほんの少し残っているようには感じられるが、以前よりも明らかに物がはっきりと見えることは確かだ。

 ということで、どうやら当分は白内障は全くなくならないまでも、よくなりはしても進行はしない。そうおもう。したがって、目の手術ということは考えなくともいいようである。

 もしかすると、眼科で処方された白内障の点眼剤が効いたのかもしれない。しかし、私はそれもあるかもしれないが、それよりも私の潜在意識の誘導自己暗示法が有効だったのだとおもっている。あるいは、点眼剤、自己暗示、その両方だった可能性もある。いずれにしろ、私にとっては嬉しいことである。
 
表題の「白内障は治るか?」の答えであるが、治る、しかも手術をしなくとも治る方法がある、ということに落ち着くようである。

2018年09月29日