キャンプ場一本で

 コロナ禍の中にあって、世は大きく変わりつつあることを実感している。

 インバウンドが低迷しているとか、飲食業界が危機的状況にあるといった報道に接するが、このことは我が家も大いに関係しているといえる。

 3月に民宿にカナダから予約が入っていたのだがキャンセルが入ったあたりから、暗雲が立ち込め始めた。我が民宿は早くから営業自粛したのだが、4月末には三密になりにくいと思われるキャンプ場にまで町役場観光推進課から営業自粛の要請が入ったのだった。

 そして数ヶ月がたった現在、我が家は大きな決断をした。

 営業を休止していた民宿を事実上閉鎖することにしたのである。閉鎖するという意味は、予約仲介サイトの登録を削除するということなのだ。我が家は五つの予約仲介サイトに登録していた。そのそれぞれを、Airbnbは販売停止、Expediaは登録抹消、Yacation Stayは販売停止、楽天トラベルも販売停止にした。るるぶトラベルは登録削除のための書類が届くのを待っているところである。

 民宿の予約サイトの登録をやめるという決断をしたわけは、私達二人とも高齢になって、民宿もキャンプ場も運営するのは大変になってきていたので、この際布団の上げ下ろし、布団を干したりとより労力のかかる民宿の方をやめることにしたということである。キャンプなら受付時に説明するだけの応対で済み、布団干しも台所の片付けもない。コロナ感染リスクも民宿よりも格段に少ないということもある。

 まあ、およそ3年間だったが、世界対象のAirbnbやExpedia、Vacation Stayの三つのサイトに登録したおかげで、日本各地からだけではなく、アメリカ、カナダ、オーストラリア、台湾、ベトナム、中国などの各国からのお客さんを迎えることができたのはいい思い出になったと感じている。

 加えて、小中高生の農泊ツアーもやめることにした。先日、電話での要請に続いて、大田原ツーリズムの担当者が直接訪れた。受け入れ農家が10軒ほど足りないので1回だけでもいいから何とか受け入れてもらえないか、ということだったが、断った。この農泊ツアーは、入退村式会場までの車送迎、農業体験の指導、生活指導、加えて食事の用意などをしなければならず、夜もそばにいての見守りもあって、負担の大きさは民宿やキャンプ場の比ではないのである。そしてこのコロナ禍だから、感染防止に相当気を使わなければならないだろう。高齢の二人はこの際農泊ツアーは引退して若い人に譲ろうと話し合ったものだった。

 休業要請から約五か月がたちGo to トラベルキャンペーンなるものが始まって、我が家にも事業者登録が必要だなどのメールがひっきりなしに舞い込むが予約仲介サイトの登録を抹消か販売停止しているのだから登録の必要はない。煩わしさから解放されてよかったと胸をなでおろしている。

 幸いにもキャンプ場はコロナ禍がやや下火となり、また折からのキャンプブームも相まって、我がキャンプ場にもお客様が以前よりも入るようになっている。

 コロナ禍以前には、5月の連休、8月のお盆、10,11月の連休などにどっと予約が入る以外は閑古鳥が鳴いている状態だったのだ。だから、その連休にがっちり稼ごうとサイト数を増やすべくキャンプサイトの拡張整備を進めていたのだった。

 しかし、昨今我がキャンプ場の予約様相が一変した感がある。ゼロに近かった普段の土日曜日にも数組ないし10組程度の予約が入るようになったのである。

 ちなみにこの一文をしたためている10月17日(土)は雨なのに7組のお客さんが入った。次週の24日(土)にはすでに満杯の予約が入っている状態である。

 昨年とはちがってどうやらコンスタントにお客さんが見込まれるようである。

 ただ、まだコロナ禍が完全に収まったわけではなく、すくなくともワクチンが出来るまでは、状態が大幅に改善されそうではない。

 当分は販売数は現状維持とし、コロナ収束を見据えて狭いサイトを広くし、車もテントも楽に入れるようにするべく作業を進めることにした。

 現在林間サイトとなっている場所の木は、山法師などの植木なのだ。私がここに来た十年前は、ここは篠がはびこる藪で入るのもやっとという有様だったのを私が数年かけて切り開いた。どうしてここが植木なのかというと、相方が長いこと植木屋に貸していたからなのだ。私が来てから数年後、あまり土地の手入れをしない植木屋に業を煮やして返してもらうことにしたのだった。しかし、いきなり植木を移すことは出来ない、というので2年の猶予を与えて返却してもらった。その後そこに柿などを植え始めたが、現在の林間サイトの部分だけはしばらくは手入れができなかった。

 昨年そこに入ってみて、見るからに堂々とした三叉の大木があることを発見し、そのそばに道を通せば、農園の中のひとつの見せ場になると感じ、業者に入って貰ったのだった。

 現在はそこを更に整理し、藪という感じを一掃すべく作業を進めているのである。

 ここまで書いた時点で予定が狂う事態が出現した。

 というのは農泊ツアーのことだが、大田原ツーリズム社の担当者が再度訪ねてきて、困り果てたような顔をして、

――11月の10日の仙台からの中学生のツアーの説明会を昨日開催したのですが、ある方がどうしても受けられないというんですよ、それで何とか代わりに受けてもらえないか、とお願いに上がりました。ああ、社長に、小口さんなら送り迎えをこちらでやれば受けて貰えるかもしれないと説明して了解を取ってあります

 という。

 いろいろ聞くとコロナ禍を理由に受け入れを渋る農家が多く、やっとの思いで受け入れ農家を集めたのに、土壇場になって家族の病気を理由に断ってきた人がいて、他を当たってもどうにもならなかったというのである。

 相方はその担当者には世話になったし、送り迎えをしてもらえるなら一回だけという条件で受け入れてはどうか、というので、私も承諾した。一回だけとはいっても、困ったときにはまた来るかもしれないが、毎回ではないだろうからいいかと思ったのだ。

 私の知る限り周辺には四つのキャンプ場がある。そのうちの二つは公営で、よく手入れされた公園のようなキャンプ場である。

 あとの二つは私営だが、そのうちの一つは少なくとも2年前までは栄えていたのに、最近は予約サイトを見ると「プラン検討中」とあって予約を受け付けていないようなので不審に思っていた。そのわけが先日判明した。相方がその施設がある林間を通りかかると、あたり一帯篠が生い茂った藪と化していたという。要するに手入れされない状態になっていたのである。そこはキャンプ場だけではなく、バンガローなどもある大きな施設だから、もしかすると全面的に閉鎖しているわけではないのかもしれないが、キャンプ場はやっていないのは明らかである。

 もう一つは経営者が亡くなって以来、篠藪にはなってはいないがいつも車が一台止まっているだけで、お客が入っている様子がない。

 いつか報道でキャンプ場の後継者難という記事を読んだことがあるが、我が農園とて例外ではない。

 しかし、キャンプ場運営は遣り甲斐のある仕事だと思う。

 当農園のキャンプサイトからの田園風景はこの上もなく美しく、来られたお客さんのほとんどが目を見張り感嘆のおもいに打たれる様子が見て取れるのである。

――料金が格安で、野菜を頂けた上、サツマイモ掘りもできる。整備されてきれいなキャンプ場は多いが、こんなに自然が一杯あって、燃し木を集めて燃やしてもいいところなんてないですよ

 と母親らしい女性が言うと、小学3年生ぐらいの男の子が、

――バッタもトンボもチョウチョもいる、また来たいです

 と目をキラキラ輝かせながらいうのを聞くと、キャンプ場を始めてよかったなあ、改めてと思うのである。

 ともあれ、あと10年ぐらいは現役として、キャンプ場に夢を託して、改善を重ねながら運営していくつもりである。

2020年11月03日