サイトコントローラー

 サイトコントローラーと言っても、それが何なのかすぐに分かるのは、関係する業界の人だけに違いない。
 

 私がその言葉に接したのは、我が柿農園を楽天トラベルに登録するべく資料を取り寄せたときだった。

 柿農園は当初は、大田原ツーリズム社の受け入れ農家として出発したので、インターネットで集客はしていなかった。

 大田原ツーリズム社が集客した小中高生3~4名の受け入れだから、集客しない分楽なのだが、しかし、受け入れのたびに説明会に出席しなければならない。また入村式、退村式にも送迎しなければならない。つまり受け入れ毎に計3回どこか決められた場所まで行かなければならないのである。これは結構な負担で、高齢域に入っている私たち二人には、あと数年が限界かな、とおもった。

 これが家に直接来てくれて送迎なしの一般客なら、まだまだつづけられるだろうとのおもいから、インターネットでの集客をおもいついた。

 ネット検索で「るるぶトラベル」というのが目についた。大手旅行会社JTBが運営する宿泊仲介検索サイトとあるので、登録した。間もなく栃木県担当だという若い担当者が来て言うには「るるぶトラベル」は業界3位であるという。他のサイトには登録はされないのですか、と言われたが、そのときは大田原ツーリズム社の客をまだ当分は受け入れるつもりだから、いくらかネットで集客できればいいと漠然とおもっていたので、いや、と答えた。

 しかし、「るるぶトラベル」での集客は結果として月に1組程度に過ぎなかった。これでは少ない。そこでネット検索をかけてみると、宿泊仲介検索サイトの業界1位は楽天トラベルであることが分かった。さっそく楽天トラベルの登録を申し込むことにした。

 楽天トラベルに登録するにあたって、懸念が一つあった。それは楽天トラベルとるるぶトラベルと同時に宿泊申し込みがあったとしたら、どうなるだろうということである。両方泊めることは出来ないから、片方を断らなければならない。これはトラブルになりかねない。いわゆるダブルブッキング問題である。そういうリスクを避ける方法はないか、これもネットで調べてみた。そういうサイトがあるにはあるが、それなりにお金がかかるということが分かった。私が調べた範囲では月1~数万円かかる。

 このことは楽天トラベルから送られてきた資料によって、あっさりと解決した。楽天トラベルに登録すれば、「ねっぱん!」というサイトコントローラーの会社が無料で他の宿泊サイトと連携して、ダブルブッキングを防いでくれるという。

 サイトコントローラーとは異なるサイトとサイトを繋いで、一括して管理することが出来るインターネット上の管理システムのことをいうのである。

 これは、例えば「るるぶトラベル」を通して予約が入ったとすると、同時に楽天トラベルの方を「売り止め」にして予約が入らないようにしてくれるのである。この管理を無料でやってくれるというのだから、さすが楽天トラベルである。業界1位だけのことはある。
 
 かくして、ネットを通して我が柿農園に一般のお客さんが入るようになった。三月からこれまでの実績は、るるぶトラベル5組、楽天トラベル5組、私のホームページから5組、の計15組である。人数にして40人ぐらいか。月平均2組の割合で、ツーリズム社からがやはり月2組ぐらいだから、合わせると月4組ということになる。収入がそこそこ増えた。

 私としては、今はこれぐらいでいいとしても大田原ツーリズム社の受け入れ農家が無理となる数年後を見据えて、一般客をこの倍に増やしたいと考えた。

 しかし、問題が発生した。

一般客が増えたことで、相方の負担が飛躍的に増えたことである。負担が大きくなったのは料理なのだ。メニューを考えるのも大変なら、十種類ぐらいの料理を作るには慣れていないということもあって、時間もかかる。その間ずっと立ちっぱなしなので、足腰に負担がくる。相方は農作業で何度も膝を痛めていて、痺れに悩まされることもしばしばだったのだ。それに、加えてこの夏場の暑さである。ガスコンロの熱もあって台所はサウナのようになってしまう。お盆の連休のときは4日連続でお客さんが入ったため、相方は消耗し疲労困憊のあげく寝込んでしまったぐらいである。申し訳ないなあ、と私はおもった。収入が増えても健康を損ねたのでは元も子もない。

 どうしたものか思案していたところ、サイトコントローラーの「ねっぱん!」からメールが入った。楽天が立ち上げた楽天LIFULL STAYという新会社が新しい民泊仲介サイトVacation STAYを作ったので、登録してはどうかというものだった。

 さっそく登録することにして、調べてみると、色々なことが分かってきた。

 登録民泊施設の多くが食事は無しか、朝食のみなのだった。これは楽天トラベルやるるぶトラベルの食事が重要な要素を担っているホテルや旅館と違って、一般住宅に客を泊める民泊新法の民宿や簡易宿所だかららしい。

 ここに登録すると、ヨーロッパ、アメリカ、中国、台湾、東南アジアなどの、主要な大手サイト、要するに全世界の大きな民泊仲介サイトと連携するので、そこに今後順次自動的に我が柿農園も掲載されるという。つまり、我が柿農園に、日本だけではなく、世界中のお客さんが入る可能性が出てきたわけである。私は夢が膨らむおもいがしたものだった。食事無しか、朝食だけなら、相方の負担もぐっと減らすことができる。

 Vacation STAYに登録を済ますと、またしても「ねっぱん!」からのメールで、Airbnb(エアビーアンドビー)と連携することが決まった、連携登録申し込みには通常3万円かかるが、キャンペーン中なので12月までなら無料、とあるではないか。この仲介サイトも民泊が主流なのだ。

 私はまるで知らなかったが、このアメリカの仲介サイトも世界的に展開している大きなサイトで、日本でも利用者が多く、私が住む県北でも日光、那須、塩原などの観光地が主だが登録民泊施設が多数登録していることが分かった。

 ここも登録申し込みをすることにし、その予約をした。登録は「ねっぱん!」との連携が10月からなので、現在「ねっぱん!」からの連絡待ちの状況である。

 今にしておもうことは、我が柿農園は一日一組受け入れの小さな農家民宿なのだから、ホテルや旅館、何室もある大きな民宿が対象の「るるぶトラベル」や「楽天トラベル」ではなく、こちらの民泊仲介サイトがふさわしかったのだということである。まあ、知識がなかったのだから致し方ないことだが、「るるぶ」や「楽天」に登録したからこそ結果的に分かったのだから、それでよし、としようとおもう。

 案の定、調べてみると、新興のVacation STAYにしても、Airbnbにしても、そこに登録されている民泊施設の多くは、楽天トラベルやるるぶトラベルには掲載していないのだった。

 この一文は、現在進行形のことをドキュメンタリー風に書いている。確定したわけではないことを書いているので、憶測の部分もある。一週間後あるいは一ヶ月後には確定事項も出てきて、まるで違った様相を呈するかもしれない。それを承知で書いているので、その前提で読んでいただきたい。

 Airbnbに登録するための下準備をしていて、柿農園の建物のタイプや部屋の様子、周辺などの写真、また担当者である私のプロヒールなどをサイトの中に掲載、記載している。要するにAirbnb上に我が柿農園のサイトを構築中なのだが、うーん、と唸ってしまうようなことがあった。

 それは本人確認の認証というのがあって、運転免許証の裏表を写真に撮って、それを画像にしてサイトに送信するというのはいいとして、その運転免許証の写真と同一人物であるかどうか確認のためスマホのアプリかWebカメラで送信してください、と出てきた。私はスマホは持っていないので、分からないままにWebカメラの方を選んだのである。

 すると、Webカメラを許可するかどうかの表示が出たので、許可をクリックすると、パソコンの画面にコンセントのようなものが写った。よく見るとルーターも写っているので、あれ、とパソコンの裏の方を見ると、そのあたりが写っているのだということが分かった。そして、パソコン上部にWebカメラのレンズが付いていることを確認した。

 そのレンズ部分は可動式になっていて、それを持ち上げるとパソコンの前に座っている私の顔が写ったのである。こんなものがあるなんて私は初めて知った。画面をみるとシャッターが付いていて、それをクリックするように促される。クリックするとカシャと音がして、私の顔写真が撮影されて、自動的に送信されるような仕組みになっていたのだった。

 カシャッと音がしたあと、「ナイススショット」というような表示が出たのには思わず笑ってしまった。現代はインターネットの時代なのだなあ、と改めて確認した瞬間でもあった。数分後、メールが来て、私のID認証が完了した、とあった。以前なら、郵送のやり取りで一週間や十日はかかったものが、今はインターネットでわずか数分で済んでしまうのである。だから今の時代はパソコンやスマホが出来ないとやっていけないといってもいいのかもしれない。

 最後に、柿農園を登録したVacation STAYを通して、柿農園が自動的に掲載されるという世界の主要仲介サイトを紹介したい。

 以下の記事を読んでいただければ、私が期待してしまうのも無理はないと納得していただけるとおもう。

 実際にどうなるのか、数か月後か半年先になるか分からないが、結果が出たらまた報告したい。

Booking.com・・・ 世界最大のオンライン宿泊サイト。現在は世界70カ国でサービスを展開しており、229の国と地域、 12万以上の目的地にある150万軒以上の宿泊施設の予約が43カ国語で可能です。主な展開国:欧米

AsiaYo・・・主な展開国 台湾

途家・・・2011年に開設し、70カ国1,100都市で50万件以上*の民泊物件が登録されている中国最大級の民泊プラットフォーム。

HomeAway・・・世界190カ国、200万件以上*のバラエティーに富んだユニークな物件を予約できるプラットフォームを運用・提供。主な展開国 欧米。

Yanolja・・・2005年に創業。宿泊施設や旅行コンテンツの提供を開始し現在17,000軒*を超える宿泊施設とパートナー契約を締結する宿泊施設の予約プラットフォームへと成長しています。主な展開国:韓国

Agoda・・・世界で急成長を遂げているオンライン旅行予約プラットフォームのひとつ。2005年に発足以来、200以上の国や地域で180万件*の物件を紹介するグローバルネットワークへと成長しました。主な展開国:アジア。

 Airbnbについてはーーー

Airbnb(エアービーアンドビー)は言わずと知れたバケーションレンタルサービス世界最大手のサービスです。2008年にアメリカのサンフランシスコでスタートしたサービスで、2018年2月時点で世界81,000の都市に450万件以上のリスティングが掲載されています。

設立から10年でAirbnbのホストが得た収益は410億ドル(約4兆1,847億円) を超え、Airbnbを通じてゲストがチェックインした回数は3億回を突破しました。また、Airbnbを日本で利用したゲストの93%が海外ユーザーで、うちアジアのユーザーは54%と、訪日外国人の宿泊手段として既に多大な実績を持っています。

ホスト保証で最大1億円の補償もついており、ホストは安心して物件の貸し出しが可能です。

2018年10月01日