エナジードリンク
辞書を引いてみると、信念とは「固く信じて疑わない心」とある。
子供の頃、富山の「毒消し売り」が置いていった薬箱から風邪薬を出して、母親はこう言った。
――これを飲めば効く、とおもって飲めば効くけど、こんな毒消し売りの薬なんか効くかどうかわからないとバカにして飲んだら効かないんだよ
この母親の言葉は私の脳裏に深く刻みこまれて、未だに忘れないでいる。
効くとおもえば効くが、効かないとか、効かないのではないかと疑念を抱けば効かない、ということである。これは真理である。
これはアロエについても当てはまり、アロエは健康にいいとおもって摂取すれば健康にいいし、アロエなんか健康にいいはずはない、とか、どうなんだろう、ほんとに健康にいいのかな、と疑ってかかれば、効用は望めないのだ。
私はFLP社のアロエ製品を愛用しているのだが、ブーストは飲んだことがなかった。アロエ三点セットといわれる、アロエジュース、プロポリス、ポーレン、の三製品を摂取しているので十分だとおもっていたからである。
相方はブーストが発売されてから愛用していて、身体が疲れたとき、ぐっと疲れが取れるから、といって、お裾分けしてくれることはあったが、そのときは特に効用を感じることはなかった。
ブーストはエナジードリンクで、アメリカのサラリーマン、労働者向けにFLP社が販売していたものが日本でも発売されるようになったものである。疲労回復を謳う炭酸飲料水である、ということは相方の話から理解していた。
農業は春から夏にかけて労働量がぐっと増える。畑を耕し、肥料を配合し、種を撒き、苗を植え、雑草を刈る、といった作業に追われるのである。これを炎天下でやることが多いので、高齢者にとっては、かなりきついものがある。
十日ほど前、私の顔に余程疲れの色が滲み出ていたのだろう。いつもにもまして、
――ほら、これを飲んでみたら、身体が楽になるわ
と、相方がブーストの缶をかざして、強く勧める。
私は受け取って、飲み始めた。いつもなら半分も飲まないで返してしまうのだが、一本全部飲み干してしまった。ほんとに効くのか試してみようという気になったからだった。
結果的に、腕や腰のあたりにわだかまっていた筋肉疲労感が和らぎ始め、一時間もたった頃、一段と身体が楽になったことを認識した。そして、おもった。
――ホントだ、これは凄い、こんなに効くなんて夢にもおもわなかったな
感覚的には、身体のあまりの変わりよう、劇的といってもいいぐらいな疲労回復の度合いに、あっけにとられたというか、なにか魔法にでもかけられたような気さえしたぐらいだった。
それから毎日250ml缶を一本飲むことにし、
――これからは私も飲むから、10ケース分の費用は負担するよ
と、相方に言った。
以来、夕方農作業が終えると、350ml缶ビールとブーストを飲むようになった。ブーストを飲むと酔い覚ましになるということも分かった。
考えてみると、ブーストを飲む気がなかったときは、相方にお裾分けしてもらっても、効用は感じられなかったし、それで当然と納得していたというか、不思議とも何ともおもっていなかったのである。
要するにブーストは私の気持ちの外にあって、相手にしていなかったので、効くか効かないか考えもしなかったし、だから疑いもしなかったということだ。
例えていうと私にとってブーストは閉じられた書物同然だから、その内容を理解することは不可能だったのである。
しかし、酷く疲れていて、効くからと強く勧められてブーストを手にしたとき、書物は開かれたということである。そして、私の場合はある種の人たちのように、疑ったり、反発したり、拒否したりするということはないので、それでは試してみようと相方の勧めをすんなりと受け入れて、飲み始めたので、ブーストの効用がたちどころに表れたということなのだとおもう。
相方の知人の旦那さんが数か月前に癌で亡くなった。享年68才。又聞きでいろいろ話は聞いていたが、私には面識がない人だった。この方の奥さんは、要するに相方の知人だが、アロエジュースを愛用していた。この旦那さん、初めのうちは奥さんに勧められて愛用していたのに、いつの頃からかアロエに反発し拒否するようになった。
アロエ製品はドラックストアで売っているサプリメントや健康食品とは比較にならないぐらい高価である。ちなみにアロエジュースは1リットルのペットボトル1本正価5940円である。
しかし、2ケース12本買えば以後は3割引きで買えるようになる。つまり、1本4158円である。毎月3本飲んで健康を保っているというケースは多い。3本だと月に1万2000円余になるが、これぐらいで健康が得られるなら安い、と私はおもうのだが・・・。
病気になって医療機関に払う費用よりは安いのではないだろうか。この知人は田んぼだけで4haも作っているのだから、裕福な農家といえる。だからこれぐらい出したって経済的に困ることはない筈である。アロエジュースをやめてしまった理由は不明だが、案の定というか、数年前に肺癌を発症、奥さんがアロエを飲めば治るからと再び勧めたが、そんなもの効くはずはないと拒否の姿勢は変わらなかった。
それから徐々に病状は進行し、通院して抗癌剤の投与を受けていたが、あるとき病院から奥さんに電話があった。お金が足りないから持ってきてくれ、という。10万円渡したのにとおもっていると、
――3万円足りない
要するに、抗癌剤の支払いが13万円だったのである。
アロエで癌やその他の病気が治った人は、私が知っているだけでもかなりいるのだが、なぜかこのようにアロエに反発拒否反応する人は多い。13万円も出して抗癌剤やるよりも、その三分の一の金額でいいからアロエ製品を摂取していたら、癌になんかならないのになあ、と私はおもい、どうしてアロエに反発拒否したりするのか不思議におもうのだが、考え、思想信条は人それぞれだからなあ、と納得することにしている。
この旦那さんはそれから一年後ぐらいに亡くなったのだが、間もなく知人女性の家にその旦那さんの妹がやってきて、切り口上で、
――ねえさん、あんた、兄さんがアロエ飲んでたらもっと長生きしたかもしれないなんて言っているんだってね、アロエなんか飲んだって早死にする人だっているでしょうよ、だから、これからはそんなこと言いふらさないで頂戴
と言ったという。おや、おや、兄妹そろってアロエに反発していたのか、念が入ってるなあと私は呆れてしまった。
アロエ製品は厚生労働省も認めている健康補助食品である。要するに健康によいとされている製品なのだ。だから、それに反発拒否反応するようでは、癌になって早死にするのは致し方ないだろう、と私はおもう。
ともあれ、私はアロエ製品を信じて摂取し十年になるが、若い頃よりも健康が増進したという自覚がある。
昨日は坂上の畑から家の裏手のビニールハウスまで、一輪車一杯に乗せた土を、そう距離にして200mぐらいか、8台運んだ。途中雨が降ってきたが、やめずに運び終えた。スコップで土を掘り起こし、それを一輪車に乗せるのだから、相当の力仕事である。十年前だったら、多分2、3台でへばってしまったに違いない。それを8台、約一時間でやり終え、それほど疲れなかったのだから、73才にしてはなかなかの体力だな、とおもい、満足感を覚えたものである。
先日、小学校時代の同級会に出席したが、男は15名のうち8名がすでに他界していて、残り7名のうちの5名が出てきたが、そのうち健康といえるのは私しかいないことが分かった。私以外の同級生は大腸癌、大動脈瘤、緑内障、膝関節痛、高血圧など患っていて、皆薬を服用しているのだった。
おもうに六十代を越えたらなんらかの健康法、それも私のように健康食品を摂取するとか、サプリメントを摂るとかして、栄養を補給しないと、衰えがはやいとか、健康を損ねるのではないか、と私はおもう。話からして、私以外の同級生は医者頼りで、これといった健康法はやっていないようだった。人生100年時代といわれる昨今、私の同級生はまだ七十代前半なのに、半数が他界し、存命でも病気がちというのは、どうしたことだろうか、と考えざるをえない。
私は、他の人がどうであろうと、やっぱりこれまでのようにアロエ製品を信じ、何が何でもアロエでいこう、と改めて確認した次第である。